細川博史(ほそかわひろし)と申します。
1978年金沢生まれの44歳です。
簡単に自己紹介をさせていただくと、高校卒業まで18年間を過ごし、学生時代を大阪、社会人生活の12年を東京で過ごし、33歳でUターン。2015年に金沢で自分の会社を創業し、興味がある分野でいくつかの事業を立ち上げ、今では、宿泊施設、飲食店、内装工事、イベントプロデュース、企業の商品やサービスの企画立案、雑誌のコーディネーター、などをほそぼそと営みながら、自分の会社以外では、いくつかの会社の役員を勤めたり、街づくりに携わったりしています。
金沢に戻り気付けば10年が経ちました。これまで様々なことに関わってきましたが、その中で、『#5 ジェンダー平等 を実現しよう』について、僕の経験談をお話しさせてください。
僕は2017年に金沢市で『KANAME INN TATEMACHI』というホテルを開業しました。開業当時、インバウンドに振り切ったホテルとしては金沢市内で一番最初であったため、多くのイングリッシュスピーカーから雇用の問い合わせをいただきました。結果、日本人は英語が話せる人のみ、更に留学生や在日外国人など、最大で9ヵ国のスタッフが働くホテルとなりました。
お客様も全体の7割が外国人で、そのほとんどを欧米系の方が占めた施設内は、まるで金沢じゃないような雰囲気で賑わっていました。特に1Fラウンジは、夜になると金沢中の他のホテルに宿泊する外国人旅行者までもがたくさん集まり、僕を含め働くスタッフもこれまで金沢では得ることができなかった体験を数多くさせていただきました。
その中の一つに、「同性カップル」とのコミュニケーションがあります。
レコードで音楽をかけることを売りにしながらお酒を提供する店内には、旅行に来たゲイやレズビアンのカップルからも数多くご利用いただきました。体感にはなりますが、日本人ばかりが集まる他のバーやラウンジに比べると、いろんなことがとてもオープンで、「ああ、金沢はこれからグローバル化が進んでいくんだな…」と感じたのを覚えています。
幸いなことに、偏見や差別的な思想を持ったスタッフがおらず、スタッフ各自もさまざまな経験を世界中から来るお客様からさせていただいていたことから、かなり早いタイミングで、Google Mapの「LGBTQ+ フレンドリー」のチェックボックスをオンにしたのを覚えています。
そしてコロナ禍の2021年。僕はLGBTQ+について、初めてしっかりと学ぶ機会を得ました。
その機会とは、とある代理店担当者から商店街に持ち込まれた、「金沢で初めて開催されるレインボーパレードに協賛しませんか」の企画。
金沢レインボープライドの代表である松中権さんから、「商店街のみなさんに講演会とかできますよ」の一言から始まりました。
実際の講演会では、松中権さんの金沢で過ごした幼少期から思春期の体験談、一橋大学の自殺者が出たアウティング事件、知らずに使われている差別用語、など様々なエピソードを聞かせていただきました。
目から鱗の話が数多くあり、「あ、あの時のアレ、アウティングだ…」、「良く使ってたあの単語、差別用語だ…」「時代と共にNGになってる単語がけっこうあるぞ…」など様々な学びがありました。
この経験は、自分が誤った認識を持っていたことを知り、無意識のうちに誰かに不快な想いをさせてしまっていたことに気付くキッカケとなりました。
この時に思ったのが、「おそらく、スタッフの接客の中でも知らずに差別用語を使っていることが結構あるのでは無いか??」ということ。
僕は自社の役員会議でこの話を持ち出し、どのような対応が可能かを急いで調べるところから始めました。
そこでたどり着いたのが、「プライド指標」というものでした。
これは、2016年に日本で初めて職場におけるLGBTQ+などのセクシュアル・マイノリティへの取組みのを評価する指標として、work with Prideという団体が定め、運営されているものでした。
これに大中小に関わらず、様々な企業が取り組んでいました。しかし北陸ではまだそんなに事例が多くなかったことから、「弊社のような小さな企業でも、プライド指標を参考にしながら、社内整備に取り組むことで、金沢や北陸のその他の企業にもこれを知ってもらうキッカケを作れるのでは無いか」と思い、取り組むことを決めました。
この取り組みを始めるタイミングで、新宿二丁目で『BAR GOLD FINGER』を営む、小川チガさんにも協力を仰ぐことにしました。チガさんから教えられた、僕の中で最も心の中に残っているエピソードがあります。
「レズ」って差別用語なのよ。ちゃんと「レズビアン」まで言わないと。レズビアン同士が自分達を「レズ」って呼ぶのはセーフだけど、それ以外はアウト!
これは僕が、PRIDE指標に取組むことを決めた最後の一押しでもあります。
ホテルには、当然、ストレートだけでは無く、ゲイやレズビアンや様々な性自認の方にご利用いただきます。これから、金沢の街がどんどん世界に開かれていくなかで、些細な一言がお客様に不快な思いをさせ、傷つけ、それは時として企業全体の存続を危ぶむことにも繋がりかねない、と感じたのです。
社内規定や施設内設備の整備に合わせ、当事者の採用を積極的に進めるかたわら、スタッフへ研修も開始しました。結論から言うと、本当に取り組んで良かったと思っています。
特に印象的なのは、研修後に実施したスタッフへのアンケートで、僕が最初に感じたことと同じことが書かれていたことでした。知らないうちにNGワードを使用していて、とても恥ずかしい想いを持ったということ。
SDGsと聞くと、自分とは直接的に関係の無さそうな企業が実施する遠いどこかの話、と感じてしまいますが、実はそんなに難しいことではありません。
#5 ジェンダー平等 を実現しよう
少なくとも、この項目に関しては、誰にとってもすごく身近にあることだと思います。今ではそういうふうに思えるようになりました。
このコラムを読んでくれた方の中から、一人でも同じ想いを持ってくださる方が生まれることを願っています。